古事記の世界観

ここまで古事記を読んできましたが、この辺りで大体、「古事記の世界観」というか舞台の大枠がみえてきたと思いますので、今回はそのまとめをしてみたいと思います。


実は、まだ、この先の部分でも古事記に出てくる世界観を現すところも幾つか出てきますが、物語はこの後、「国譲り」、「天孫降臨」という神代編のクライマックスに入っていきますので、ここで一旦おさらいをすることで、この後の物語を深く読み込むヒントになります。


まず、古事記の世界には

①南方系から伝わった「水平的世界観」

②北方系から伝わった「垂直的世界観」

の二つの世界観が混在しております。


①水平的世界観の特色

「南方的」、「母系的」、「国つ神」、「縄文的」

南方から流入してきた概念や思想で、縄文人に伝わった世界観です。

この世界観は

「葦原中つ国」(地上界)、「常世の国」(海の彼方)、「ワタツミの宮」(海底世界)、そして「根の堅州国」(妣の国)で構成されています。


②垂直的世界観

「北方的」、「父系的」、「天皇」、「弥生的」

北方から流入してきた概念や思想で、渡来系弥生人に伝わった世界観です。

この世界観は

「高天原」(天上界)、 「葦原中つ国」(地上界)、「黄泉の国」(地下)

このように「葦原中つ国」を軸jに、水平と垂直で構成されています。

簡単にそれぞれを紹介します。

「高天原」 天空に浮かぶ「天つ神」が暮らす世界。アマテラスさまが統治しています。

(天の浮橋) 天上界と地上界との間に浮かぶ、宇宙ステーションのような中継基地

「葦原中つ国」 「国つ神」と人間が暮らす。スサノオさまが追放された地でもあり、オオクニヌシさまが統治しています。

「黄泉の国」 死者のいる世界。「黄泉つ平坂」で地上と繋がっている。

「常世の国」 海の彼方にある国でスクナビコナさまが渡った国。

「ワタツミの国」 ワタツミとは海の神。また、ホオリ(山幸彦)が訪れ、トヨタマビメと出会った場所。

「根の堅州国」 大地の下にある堅い砂でできている国。生命力が宿る根源の世界。海底にも繋がる地下世界であるが草原の広がる大地もある。一方で、色々謎が多く、それらはスサノオさまに由来している。


葦原中つ国とは、「葦の繁っている国」という意味です。「古事記」では、人間のことを「青人草」と植物で表現しています。この意味は、「人間は大地の中から萌え出る草の一種」という意味です。従って「繁栄している国」ということを表現しています。


神話はフィクションですが、その創作話の背景や土壌は当時からあり、これは古代人が世界をどう考えていたかという点で、大変興味深いのです。


最新の歴史研究、そして遺伝子学から考えても、3~4万年前に南方から日本列島に人がわたり縄文文化を築き、その後の約3000年前に朝鮮半島経由で入ってきた人々が弥生文化を担っていたことが分かります。


そしてこれらを「古事記」に当てはめてみると、

「因幡の白兎」や、「海幸・山幸」は水平線上の世界という南方系で縄文的な世界観

「天孫降臨」など天皇に関わる神話は垂直的なもので、北方系で弥生的な世界観といえます。推測ですが、東南アジア経由で日本に来たひとの神話を基層として、そこに北方系の天皇を中心とした神話がまぜ合わさったものが「古事記」だったといえるでしょう。

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