山幸彦と海幸彦

個人的にいろいろありまして(大したことではありません。仕事で新しいことを始めたりしていたもので...)、ちょっと間隔があいてしまいました。


ただ、前回、「猿田毘古神」の記事でも書きましたが、古事記でいう「天孫降臨」というテーマ、さらには、筆者自身のこの取組についても大きな課題がたくさん出てきたのも事実です。


そういう意味では、古事記の「神代」最後の部分にあたり、自身のスタンスと、今後の方向性も定めないと、この先には進めないという、いわば分岐点にいる感じがします。


先週末に京都の幾つかのお社に参拝いたしましたが、そのときにも、またまたひらめきがありましたし、そこに参拝したことは、とても意味があったことが後からわかりました。とても不思議な体験をしました。


そのことは、また「参拝紀行」のところで書きたいと思います。



さて、古事記「上巻」の最後のところは「山幸彦と海幸彦」の話です。

「木花之佐久夜毘売と誓約」で、御生まれになった、火照命(ホデリ)と、火遠理命(ホヲリ)のおふたりの物語です。



(現代語訳)

さて、ホデリは海佐知毘古(海幸彦)として大小、いろいろな魚を捕り、ホヲリは山佐知毘古(山幸彦)として大小、いろいろな獣を捕っていた。

そこでホヲリはその兄のホデリに「それぞれの獲物を捕る道具を取りかえて使ってみよう」といって、三回お願いしたが許されなかった。しかしついにやっとのことで、取りかえることが出来た。


そこでホヲリは魚釣りの道具で魚を釣ってみたが一匹も釣ることが出来ず、その釣り針を海の中に失ってしまった。


そこで、その兄のホデリがその釣り針を返すように「山の獲物も海の獲物もそれぞれ捕る道具は自分の道具がよい。

それぞれ返そうではないか」といったときに、弟のホヲリが「兄の釣り針は魚釣りをしても一匹も釣れず、ついには海に失ってしまいました」とお答えした。しかし兄は釣り針の返還を強く求めた。

そこで弟は腰につけていた十拳の剣をつぶして五百の釣り針を作ったが兄は受け取らなかった。

そこで千の釣り針を作ったが兄は受け取らず「やはりもとの釣り針をかえせ」と言った。



※神話というより、日本の「民話」として、「海幸山幸」の話はとても人気があります。

また、この話からは色々な「日本むかしばなし」が派生しています。

ごぞんじのかたもそうでないかたも、ぜひ、このオリジナルをお楽しみください。

(現代語訳)

そこで弟が泣き悲しんで海辺にいたとき、塩椎神(シオツチ)がやって来て「どうして虚空津日高(ソラツヒコ)は泣き悲しんでいるのか」と問うと、「わたしと兄と釣り針を交換し、兄の釣り針を失ってしまったのです。

そこで釣り針を返すよう求められたときに多くの釣り針を作り弁償しようとしたのですが受け取らず『やはりもとの釣り針をかえせ』と言うので、泣き悲しんでいるのです」とお答えになった。


そこでシオツチは「わたしによい考えがある」といって、すぐに竹を隙間なく編んだ小船を作った。

そしてその船にホヲリを乗せて「わたしがその船を押し流しますので、しばらくそのまま進んでください。

よい潮の道があるでしょう。

そしてその潮に乗って進むと、魚の鱗のように作られた宮殿に着きます。

それがワタツミの宮殿です。

その宮殿の門に至ったならば、傍の泉の上に神聖な桂の木があります。

そこでその木の上に座っていると、その神の娘があなたを見て、取りはからってくれるでしょう」と言った。


そこで教えられたとおりに少し進むとまったくシオツチの言ったとおりであったので、すぐにその桂の木に登り、座っていた。


すると、ワタツミの娘の豊玉比売(トヨタマビメ)の召使いが美しい器を持ってきて水を汲もうとしたとき、泉に光るものがあった。上を見てみると美しい男がいた。


たいへん不思議に思っているとホヲリは召使いを見て水が欲しいと仰せになった。

すぐに召使いは水を汲んで器に入れ献上した。そこで水を飲まずに首に巻いていた玉を外し、口に含んでその器にはき出された。

するとその玉は器に付き、召使いはその玉を離せなかったので玉が付いたままトヨタマビメに奉った。


そこでトヨタマビメはその玉を見て、召使いに「もしかしてだれか門の外にいるのですか」とおたずねになると、召使いは「泉の上の、桂の木の上に人がおられます。

たいへん美しい男性です。

我が宮の王にも勝るたいへんりっぱな人です。

その人が水を所望するので、献上したところ水を飲まずにこの玉を吐き入れられたのです。

この玉は離すことが出来ません。

そこで玉を入れたままにして持ってきて献上したのです」とお答えした。


※ホオリさまとトヨタマビメさまの出会いは、その後に大きな影響を与える一大出来事になるのでした。





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