スサノオさまが会いたかったお母様とは?

「アマテラスさまとスサノオさま ~其の壱~」の古事記原文訳にもあり、その記事で予告をさせて頂きましたが、スサノオさまが全く役目を果たさずに、母に会いに行きたいと駄々を捏ねています。今回はこれに関してふたつの側面から考えてみたいと思います。


①「母」とはだれなのか

②「何処」に会いに行くのか


まず①の母ですが、これは普通に考えると亡くなったイザナミさまだと思われます。しかしイザナミさまはスサノオさまのお母様なのでしょうか?

スサノオさまは、父神のイザナキさま黄泉の国から帰還され、その穢れを川で祓い、禊をした一番最後に誕生された神さまです。イザナミさまから産まれてきた神さまではありません。「古事記」はそのスタンスを取っていますが、「日本書記」には例によって「ある書によると~」という書き出しでイザナミさまからお産まれになった説も掲載されておりますが、そうでない説を重視しています。ただ、「亡き母」と表記があるためにそこがイコールイザナミさまだと思われてしまいます。


次に②の「何処に」ですが、スサノオさまもイザナキさまも「根の堅州国」 (ねのかたすくに)と言っています。イザナミさまがいらっしゃるところは「黄泉の国」ですから、もしイザナミさまがお母様で、会いに行きたいのなら「黄泉の国に行きたい」と言われる筈です。ここが難しいところなのですが、黄泉の国と根の堅州国は同じ国なのか違う国なのかは意見が分かれるところなのです。


この点に関しては、国が何処にあるかだけを考えているだけでは全く埒が明かず、そうではなく①、②、さらにそれ以外の要素を合わせて考えると、少し謎が解けていきます。

その謎解きですが、「根の堅州国」は他に登場するのかですが、これは、まさにスサノオさま、そしてこの後出てくる大国主命が関与しています。スサノオさまの永住の地がまさにこの「根の堅州国」で、オオクニヌシさまは後世にここを訪ねます。黄泉の国は、イザナキさまに寄って千引きの石によって現世との行き来を遮断されていますから、ここではイコール黄泉の国とは考えられません。


次にスサノオのご母堂さまですが、これも大きくふたつ考えられます。

ひとつは、イザナミさまがお産みにならなかったとしても、霊統を受け継いでいるということです。神さまですし、この国は物からも誕生する(事実、汚物や禊の際に)、神としての魂の継承です。この点はアマテラスさまもツクヨミさまも同じです。

ということは「黄泉の国」ということになります。


もうひとつ考えられるのがその後のスサノオさまの振舞いや結果から、スサノオさまは実は中央ではなく地方政権の象徴として描かれていたのではないかという点です。実はイザナキさまの禊の際に、大和朝廷の有力豪族の祖先神が誕生しています。つまり、三貴子としていますが、それは中央政権下に位置付けるということで、実は地方の抵抗であって、母のいる根の堅州国への思いを語ったのが、「大海原を治めることを怠り、母の居る自分の国に帰りたかった」ということになります。

ということになると、これは、「黄泉の国」でないことになります。


こうしてみると、母は一体イザナミさまなのかどうかははっきりしませんが、黄泉の国と根の堅州国は、どうやら違う国のような気がしてきましたが...


何れにしてもスサノオさまは、記紀に出てくる早々いきなり大きな物議を醸してくださったのは事実。しかし、こんなものではなく、もっと面白くなっていきます。

0コメント

  • 1000 / 1000