古事記における誓約の意味とは?

先に書いた記事、「アマテラスさまとスサノオさま ~其の弐~<誓約>」のところではちょっと中途半端になってしまいましたので、このアマテラスさまとスサノオさまの「誓約(ウケヒ)」に関してその意味を考察したいと思います。


まず簡単に振り返ってみますと、

①まず、アマテラスがスサノオの持っている十拳剣(とつかのつるぎ)を受け取って噛み砕き、吹き出した息の霧から以下の三柱の女神(宗像三女神)が生まれたました。

多紀理毘売命(たきりびめ) - 別名:奥津島比売命(おきつしまひめ)

市寸島比売命(いちきしまひめ) - 別名:狭依毘売命(さよりびめ)

多岐都比売命(たぎつひめ) - 辺津宮に祀られる。


②次に、スサノオが、アマテラスの「八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠」を受け取って噛み砕き、吹き出した息の霧から以下の五柱の男神が生まれた

左のみづらに巻いている玉から 正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命

右のみづらに巻いている玉から天之菩卑能命

かづらに巻いている玉から天津日子根命

左手に巻いている玉から活津日子根命

右手に巻いている玉から熊野久須毘命

これによりスサノオは「我が心清く明し。故れ、我が生める子は、手弱女を得つ。」と勝利を宣言しました。

誓約とは「占い」です。また、この誓約は本来スサノオさまに邪心がないことを証明するものでしたが、本来誓約以前にその勝ち負けの基準を決めていなかったために曖昧になってしまいました。


ですが、そういうことではなく、この誓約にはこの後におけるふたつの大きな意味が隠されているのです。それはなにかというと、


①アマテラスさまの後継者の誕生

②スサノオさまの永久追放


これは、この段階では明確になっていませんが、その後物語の進行で明らかになっていきます。

そもそも、この三女神、五男神が、それぞれの持ち物から産まれたとするのは間違いです。それぞれの持ち物であっても、相方の行為によって誕生しておりますから、考え方として、アマテラスさまとスサノオさまは両親と考えてよいと思います。姉弟ですが、よくよく考えればイザナキさまイザナミさまも「兄妹(姉弟という説もあり)」でした(邪推ですがもしかしたら、その正当化かもしれません)。


スサノオさまはこのあと、この勝利を境に狼藉極まりなく、結果、高天原から追放されてしまいますが、本来は、アマテラスさまに後継者が出来たことにより、スサノオさまは邪魔な存在になったと考えられます。ようするに、古事記は物語なので、そのあたりを暴れ者の厄介ものとして扱ってますが、真意は、正統な継承者を明確にすることです。イザナキさまから高天原の統治を命ぜられたアマテラスさま。その統治の継承を揺るがす者は例え兄弟、あるいは夫婦であっても許されないのです。


こうして考えますとこの「誓約」というのは単なる物語ではなく、アマテラスさまから連なる後継者の正統性をより明確に示すために物語上不可欠な場面だったというのがわたくしも支持する学説です。



*それと、これは、古事記の研究者で有名な竹田恒泰さんが著書「現代語古事記」(学研出版)に記しておりますが、「スサノオが高天原に来る際にアマテラスはのっとるが目的だと思ったがスサノオにそういう邪心はなく、天津神さまといえども、他の神さまのおこころの内はお読みになれない」という点を指摘し、「なおさら神ではない我々人間は、神社の参拝で明確に申さなければ伝わらないし、またこのように誤解を招くこともある」と、「祝詞を奏上することは神さまに正確にお伝えすること」と、その重要性を書いておられるので、大事なことなのでここにも書いておきます。

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